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2024.12.01 イベント

シンポジウム『未来社会のための次世代サイバーライフライン』開催

【シンポジウム概要】
東京大学 次世代サイバーインフラ連携研究機構および山梨県立富士山科学研究所主催の国際シンポジウム『未来社会のための次世代サイバーライフライン』が開催されました。
※本シンポジウムは一般社団法人 電子情報通信学会の後援のもと開催しております。

オフライン・オンラインでのハイブリッド開催でしたが、多数の研究機関、企業の方が山梨県富士吉田市の富士山科学研究所にてオフラインでご参加くださいました。また休憩時間には電子情報通信学会 通信ソサイエティ第三種研究会である「サイバーライフラインに関する分野横断型研究会専門委員会」によるポスター発表もあり、学識豊かな研究者たちと若手研究者、学生たちによる質疑を含めた活発な交流が行われました。

◆シンポジウム『未来社会のための次世代サイバーライフライン』 Webサイト
https://www.mfri.pref.yamanashi.jp/kazan/sp/
※オンライン・オフライン双方参加可能なハイブリッド開催

◆開催主旨
近年、すべての人・モノがインターネットに接続されるようになったことで、情報通信が国の重要なインフラの一つとなっており、近い将来においては、人間の生命維持・社会経済活動を支える「ライフライン(生命線)」になると考えられます。
この「未来社会を支えるサイバーライフライン」を実現するためには、どのような価値が必要なのかを、産業、行政、学術の複数の視座で改めて深化させることを目的に、本シンポジウムを開催いたします。これからの社会を支える企業、行政関係者、研究者に対して、各界の最前線で取り組む方を講師にお招きし、なぜサイバーライフラインが必要なのかを、具体的な活用・価値に基づいて2日間にわたり議論いたします。

  • ・11/21 1日目(全編日本語、同時通訳あり、講演7枠+パネルディスカッション1枠)
    サブテーマ:富士山地域におけるDX推進に向けた取り組みと成果・展開
  • ・11/22 2日目(全編英語、講演10枠+パネルディスカッション2枠)

 

【11/21(木)1日目】
1日目である11/21は、サブテーマとして「富士山地域におけるDX推進に向けた取り組みと成果・展開」を掲げ、地震・火山災害や火山地域におけるDX推進の取り組みについて、研究機関、企業の方を講師としてお招きしご講演、パネルディスカッションを実施いたしました。

写真1:ご挨拶される富士山科学研究所 藤井敏嗣所長

講演としては、富士山地域等の火山地域におけるDX推進について、「地震・火山観測」と「情報通信整備」の観点から、講師の方々にご講演いただきました。「地震・火山観測」における課題や現在取り組んでいる情報通信技術を活用した研究について、富士山科学研究所 吉本充宏研究部長、九州大学 地震火山観測研究センター 松島健教授、東北大学大学院理学研究科 田口貴美子助教からご講演をいただきました。
特に、富士山地域における情報通信整備・活用の課題については、技術的な整備の難しさだけでなく、御神体であり世界文化遺産であるという側面を持つがゆえの困難さを非常にわかりやすく説明いただきました。

写真2:富士山科学研究所 吉本充宏研究部長

また「情報通信整備」の観点から、総務省情報通信政策課 田邊光男課長、NECネッツエスアイ 谷口宏氏、東京大学次世代サイバーインフラ連携研究機構 中尾彰宏機構長、KDDI 遠藤晃氏からご講演をいただきました。(総務省田邊課長はオンラインにてご登壇)
日本政府が考える地域社会が抱える課題とそれを解決するためのDX取り組みやデジタル人材に関するお話をいただくとともに、富士山地域での情報通信基盤整備の具体的な取り組みや課題、地震等災害時における情報通信手段の確保に向けた取り組みなど、情報通信基盤があることで回避できる・解決できる事象を踏まえて具体的にご説明いただきました。

写真3:東京大学次世代サイバーインフラ連携研究機構 中尾彰宏機構長

1日目の最後には、ご登壇いただいた講師によるパネルディスカッションを実施いたしました。主催者でもある中尾彰宏機構長をモデレーターに、富士山地域におけるDX推進の課題について改めて棚卸を図るとともに、DXをさらに前に進めるために今後数年間で実施することを具体化させ、パネリスト間で協力して取り組むことを約束しました。

【11/22(金)2日目】
2日目である11/22は、メインテーマである「未来社会のための次世代サイバーライフライン」について、海外研究者も招聘した二部構成で講演・パネルディスカッションを実施いたしました。
第一部では、未来社会における情報通信を活用した取り組みについて、東京大学東京カレッジ 淺間一特任教授、神戸大学大学院 科学技術イノベーション研究科 永田真教授、名古屋工業大学大学院工学研究科 和田山正教授、首都高速道路 小山俊泰氏、富士山科学研究所 富士山火山防災研究センター 本多亮研究員からご講演いただきました。通信を活用した自律分散型ロボットシステムから、通信と接続することによる包括的なセキュリティや通信のレジリエンス向上、首都高速道路における有事・平時双方での活用等、幅広い分野での「情報通信の活用」について現状も踏まえて具体的にお話いただきました。
パネルディスカッションでは、講師の方々の専門分野を踏まえ、情報通信と異分野の研究・技術連携が促進することで期待されるイノベーションや、ライフラインとしての情報通信に求められる堅牢性・レジリエンスを確保するためにすぐにでも取り組むべき方策について議論いたしました。

写真4:第一部パネルディスカッション
左から中尾彰宏機構長、淺間一特任教授、永田真教授、和田山正教授、本多亮研究員

また第二部では、JST ASPIREにおける国際頭脳循環の一環として、フィンランドのオウル大学からMatti Latva-aho教授、アメリカのノースイースタン大学からTommaso Melodia教授とAbhimanyu Gosainシニアディレクター、慶應義塾大学 理工学部から大槻知明教授をご招待し、主催者である中尾彰宏機構長も含めてご講演とパネルディスカッションを実施しました。(Matti Latva-aho教授はオンラインにてご登壇)

写真5:ノースイースタン大学Abhimanyu Gosainシニアディレクター

未来社会のための6Gとして、従来の通信業界のビジネスモデルではなく、ロジスティクス、防衛、農業、産業、健康、エネルギー、自動車分野等でカスタマイズ可能なソリューションや価値創造メカニズムの創成が必要であり、それらを実現するために、量子安全機構やスペクトル管理、オープンソースRANコンポーネント等を活用したよりレジリエントな情報通信ネットワークの開発が焦点となる旨お話をいただきました。
パネルディスカッションでは、情報通信インフラのレジリエンス向上を目的に、レジリエンスを構成する要素や強化に向けた国際協力、そして現時点で具体的に取りうる行動について議論がなされ、会場でご参加いただいた電子情報通信学会 山中直明会長から直接質問が出るなど、参加者を含めて非常に有意義な時間となりました。

写真6:ノースイースタン大学Tommaso Melodia教授

最後に、JST ASPIREにて通信分野の研究主幹も務められている電子情報通信学会 山中直明会長から、本シンポジウム講評とともに、今後の国際頭脳循環に対する考えやその中心となる人材を育成していくことの重要性をコメントとしていただきました。

写真7:電子情報通信学会 山中直明会長

【東京大学次世代サイバーインフラ連携研究機構 中尾彰宏機構長コメント】
防災対策として情報通信の整備が必須な富士山地域において、国際シンポジウムを開催できたことは有意義であった。なぜなら、今後ライフラインとしての情報通信が必須である現場を、産学官のステークホルダーが実際に目にしながら将来の連携を議論できたからである。
特に、海外からの研究者にもレジリエンスの重要性を理解していただき、ASPIREの国際連携やHCLのライフラインを目指す情報通信研究学術推進に繋がったことは重要な一歩であった。今後も国際産学官連携を進めていく意気込みである。